健康であれば、誰でも息を吐いて声は出せます。
では、息を吸っても声は出せますか?
実は、この息を吸って声を出すというのが、高音を出せるようになったり、歌の音色をコントロールするのにとても良い練習になるんです。
息を吸って声を出す方法を「吸気発声」といいます。
吸気発声と聞いてもあまりピンとこない方がいれば、お笑い芸人のさんまさんが笑った時を思い浮かべて下さい。
さんまさんが笑う際は、「ヒーーーーー!」と引き笑いしているのを聞きませんか?
あれが、吸気発声です!
さんまさんが通常話す際はガラガラとした声ですが、「ヒーーーーー!」と笑っている際はとても綺麗ですよね?
あれは、仮声帯が働いてないからなんです。
今回は、この吸気発声で仮声帯をコントロールする方法を重点的に紹介していきます。
吸気発声では喉の中で何が起こっているのかという点から解説しますので、吸気発声を全く知らない方でも問題ありません。
ボイトレで吸気発声する際の喉の動き
脳科学的には、仕組みを理解することで、より上達が早くなるということが知られています。
そのため、練習方法の紹介の前に、吸気発声をしている際に喉の中がどんなふうに動いているかを解説していきます。
吸気発声時の喉の動きは少し難しくて理解するのが大変なのですが、喉のコントロールの上達につながりますので、読み飛ばさずにこの章も読んでみて下さいね。
基本的な声帯の構造から説明します。
以下の図は、頭側から見た声帯の断面図で一般的な発声時(呼気)の声帯時の様子を表しています。
青矢印は空気の出る向きです。このことに関しては、ご存知の方が多いかと思います。
一方、息を吸っている最中に声帯を閉じた様子が以下の図になります。
左図(息を吸っている時の図)は、声帯は閉じていないため音はなりません。
この状態で、声帯を閉じてやると声帯が振動するようになるので、音が出るようになり、この発声方法を「吸気発声」と言います。
仮声帯が働いていないときは、喉の中は以下の図のようになっています。
以前解説させて頂いた(※)ように、呼気の際は息の量が多すぎると、声帯だけでなく仮声帯も閉じます。
※仮声帯の基礎的な解説は、以下の記事をご確認ください。
一方、吸気の際はゆっくりと息を吸って声帯を閉じれば、以下の図のように仮声帯は働きません。(青矢印は吸気、黄色矢印は呼気の際の空気の流れを表しています。)
その理由は、まずは声帯⇒仮声帯の順に閉じるのが一般的だからです。
吸気で徐々に空気を増やしていって、音が鳴る状態を作れば仮声帯を抜いて発声することが出来ます。
吸気の時に仮声帯を抜いて発声している感覚を覚えておいて、呼気の時も発声すれば仮声帯を抜いた発声をすることが出来るようになります。
仮声帯のコントロールの前に、吸気発声の方法を次のセクションで解説します。
吸気発声は出来るから、早く仮声帯のコントロール方法を知りたいという方は、次のセクションは飛ばして「仮声帯を吸気発声でコントロールするボイトレ方法」のセクションをご確認ください。
吸気発声のボイトレ方法
今まで息を吸って音を出したことがない人からすれば、吸気発声がとても難しいように思えますが、コツをつかめば簡単に出来るようになる方が多いです。
手順①:まずは、「はー」と1秒程度息を吐いて、息を止めて下さい。
手順②:手順①の状態で、ゆっくりと息を吸います。この際、ゆっくり過ぎると音が鳴らず、早すぎると声帯が一気に開いて音が鳴らない状態になりますので、自身で色々調整してみて下さい。
練習方法は分かったけど、各手順でどのような効果があるのか分からないという方のために、以下に各手順の解説を記載しました。
息を止めると声帯は閉じた状態になりますので、まずは声帯を閉じるためにこの手順が必要になります。
口から出る空気量はとても大切ですので、丁寧にやって下さい。
初めてやる方でも10分程度練習すれば、音が出るようになります。息を止めるために喉に力を入れすぎると音が鳴らないです。音が出るようになったら、自分の出しやすい音域で音程移動して吸気発声に慣れた後に、以下のセクション「仮声帯のコントロールの方法」の練習に移ってみて下さい。
仮声帯を吸気発声でコントロールするボイトレ方法
ボイトレで吸気発声がある程度出来るようになったら、仮声帯のコントロールに移ります。
このセクションで紹介するボイトレ方法で効果が出ない場合は、吸気発声の練習のセクションに戻って吸気発声のレベルを上げることをおすすめします。
吸気発声が本当に仮声帯のコントロールに繋がるのか疑問に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、効果がある方が多いですので是非試してみて下さいね。
継続して練習しても効果が出てないように感じても、ある日突然できるようになるということはボイトレには多いので、気楽に続けるのが上達のポイントかもしれません。
では、吸気発声を応用した仮声帯のボイトレ方法を解説します。
やることが多いので、まずは①~③を練習して出来るようになったら、④~⑥を練習することをおすすめします。
手順①:口は閉じて鼻から息をゆっくりと吸いながら、声帯を引っ付けて自分の出しやすい音程で鼻から音を吸気発声で鳴らしてください。
手順②:手順①で出した音と同じ高さの音を、喉の状態を変えずに呼気発声でも出してみて下さい。この際に、喉頭が落ちたり、声が詰まったりしないように気を付けて下さい。まずは、吸気と同じように呼気でも空気だけを出して声帯を閉じる練習から始めた方が良いです。
手順③:鼻から息を吸い吐きして、吸気発声と呼気発声を繰り返して音程を上げていってください。自分の出しやすい音程から、1オクターブ上げれるように徐々に上げて行ってみて下さい。
手順④:今度は口から息を吸って口から息を吐いてください。自分の出しやすい音程で大丈夫です。
手順⑤:口から息を吸い吐きして、音程を上げていってください。自分の出しやすい音程から、1オクターブ上げれるように徐々に上げて行ってみて下さい。
手順⑥:最後の仕上げです。仮声帯が働かないように、呼気のみでまずは息を出しながら声帯を引っ付けて声を出してみて下さい。
各手順の意味を以下に簡単に解説しましたので、なぜこの手順で練習した方が良いのかを理解してみて下さい。
息の量を減らすために、まずは鼻だけで空気量の調整の練習をします。音は鳴らさずに息を吸っているだけのときは、声帯も仮声帯も引っ付いていない証拠です。ニュートラルな初期状態を作るために、まずは息だけを吸います。これが出来たら、自分の出しやすい音程(力まないため)で音を鳴らします。
このとき、首の力みが無いようにしてください。首の力みがあるかどうかは、首を触っていただければ分かります。首の喉頭付近に手を当てながら【手順①】をやって、首がへこむ(ぎゅっとなる)ことが無いかを確認してください。
多くの人は、この手順②で躓くはずです。仮声帯が上手くコントロールできない人は、空気の量が多すぎていないことが9割近くいるためです。手順②をマスターするのに2週間程度かかることもありますので、焦らずにゆっくりと頑張ってみて下さい。
音程を変えるためには、空気の量と喉の中の状態を徐々に変えることが必要です。徐々に変えれるようになれば、そこから飛躍的に進歩します。喉の中が見えないので上達しているのか分からないところが、かなりイライラしますが、練習すれば確実に上手くなりますので続けてみて下さい。
歌が上手い人でも、意識的にコントロールできておらず感覚で歌えてしまう人もいます。しかし、そういう人はある日突然歌えなくなるスランプ(高音が出にくくなったなど)に陥ると抜け出せなくなるので一長一短かと思います。
鼻からの時のように、徐々に空気を吸うことが大切です。手順3までは出来たけど口から息を吸うと出来ないという人は、はじめに息を吐いてから手順4を始めてみて下さい。
はじめに空気を吐くことで、吐ける空気量が絶対的に少なくなるので、旨く行く可能性は高くなります。
鼻からの吸い吐きと同じように、喉の状態をなるべく保つのがポイントです!
手順①~⑤の総仕上げが⑥です。ここまで出来るようになれば、仮声帯が働かないようにかなりコントロールできるようになっているかと思います。
まとめ
今回紹介した吸気発声は結構難しいのですが、今回紹介させて頂いた内容を出来るようになれば、かなり喉を自由にコントロールできるようになりますので頑張って続けてみて下さい。
今回は仮声帯が働かないようにコントロールする方法を紹介しましたが、仮声帯を積極的に働かせる”ノイズ”という手法も今後紹介させていただこうと考えています。
ボイトレは練習に行き詰ることが多いので、変な癖がつく前にボイトレ教室に通うことをオススメします。
昔は私も本やサイトの情報を見て練習していたのですが行き詰まり、ボイトレ教室に行ってみると自分では全く気付いていない箇所が原因で高音を出せなくなっていました。
参考情報ですが、私が過去に通っていたボイトレ教室で良かったと思うのが「IPC VOICE STUDIO」です。
現在の自分の状態に合わせたボイトレ方法を教えてくれるので、素人の方からボイトレ講師、プロの歌手も通っているほど隠れた人気があるスクールになります。
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音域を気にせずに好きな歌を歌えるようになるととても気持ちが良いので、最短でそこに到達するためにも体験レッスンだけでも受講をお勧めします。