裏声が出ないのはなぜ?初心者が最初につまずく理由
「裏声が出ない」の正体は、発声の仕組みにあり
「裏声」と聞くと、どこか遠い世界の話のように感じるかもしれません。けれど、実は多くの人がすでに日常的に裏声を出しています。たとえば、驚いたときに「えっ!?」と高い声が出る瞬間。それが裏声です。
しかし、「歌う」目的で裏声を出すとなると、事情は変わってきます。なぜなら、歌の裏声には「コントロール」や「持続」「安定性」が求められるからです。ボイトレ初心者がつまずくのは、まさにこのコントロールの部分。多くの場合、喉や身体の使い方が分からないまま無理に高音を出そうとし、喉を締めてしまいます。
裏声は「筋トレ」と同じ?鍛えなければ機能しない理由
裏声を出すためには、「輪状甲状筋」や「声帯縁」の繊細なコントロールが必要です。ですがこれらは普段あまり使われることがない筋群であり、初心者にとっては動かし方すら分からないのが実情です。
「声は出せるけど、高音になると急にかすれる」「出そうとしてもひっくり返るような音になる」といった現象は、この筋肉の未発達によるものです。スポーツで言えば、初心者がフォームを知らないまま全力疾走しているような状態です。
「地声のまま高音を出す」思い込みが障壁に
初心者が陥りがちな誤解の一つに、「力を入れれば高音が出る」という思い込みがあります。しかし実際には、力任せの発声は喉を痛め、結果的に「出せない」「続かない」「音が外れる」という悪循環に陥ります。
裏声は、むしろ「脱力」と「開放感」のある発声が求められます。つまり、出すにはコツがあり、間違った力みが障害になるのです。
あなたが裏声を出せないのは、「裏声筋」が眠っているから
筋肉に例えると、裏声発声は「今まで使ったことのない筋肉を目覚めさせる作業」と言えます。そしてそれを目覚めさせるには、正しい方法で少しずつ刺激を与えることが必要です。
この段階で大切なのは、「裏声の出し方を知る」だけではなく、「裏声の出せる状態を作る」ことです。いきなり力んで出そうとするのではなく、まずは筋肉に正しい指令を与える練習を始めることが鍵になります。
裏声が出せるようになると何が変わる?
裏声を使えるようになると、あなたの歌声の表現力は一気に広がります。柔らかさ・優しさ・空気感といった要素を自在に加えることができるようになり、曲の幅も感情の幅もぐっと広がるのです。
また、裏声を出せるようになると、「地声の限界を超える高音域」が手に入ります。これによって、今まで歌えなかった曲にも挑戦できるようになり、自分の声に対する自信が深まっていきます。
第2章:自宅でできる裏声の出し方トレーニング|初心者向け5ステップ
まずは「裏声が出る状態」を作る準備運動から
裏声は喉を無理に開くのではなく、本来備わっている発声機能を目覚めさせる作業です。
いきなり高音を出そうとせず、まずは身体の準備を整えましょう。
ステップ0:姿勢と呼吸を整える(1日2分)
- 壁立ちチェック:背筋・首・腰がまっすぐになるよう、壁に沿って立つ
- 腹式呼吸3秒吸って6秒吐く×3セット(“スー”と音を出しながら)
これだけでも、喉の緊張がほぐれ、裏声が出やすくなる準備が整います。
ステップ1:「フクロウの声」で裏声の感覚をつかむ
- 「ほぉ〜」「うぅ〜」と、高く柔らかい声を出してみる
- 息漏れが多くてOK。音量は小さく、かすれても構わない
ここで大切なのは、“力を抜いて出す”裏声の感覚を得ることです。
「うまく出せたか」ではなく「喉が楽だったか?」を重視しましょう。
ステップ2:リップロールで声帯のバランスを整える
- 唇を軽く閉じて「ブーー」と音を鳴らす
- 息を一定に吐きながら、リズムよく揺らす(5秒×3セット)
これにより、喉の脱力・呼気の安定・声帯の連携が一度に鍛えられます。
ステップ3:ハミングで「鼻腔共鳴」を使う
- 「ん〜〜」と鼻に響かせるように小声で発声
- 口を閉じたまま、高い音に軽く移行する(ラ〜ソ〜ファ〜)
裏声は“鼻腔方向に響かせる”感覚を持つと出しやすくなります。
ステップ4:母音だけで裏声を出す練習
- 「あ〜」「い〜」「う〜」を小さな裏声で伸ばす
- 最初は1音ずつ、徐々に音を滑らかにつなげてみる
この練習は、言葉を使わず“喉の筋トレ”として裏声を鍛える目的で行います。
ステップ5:裏声と地声の切り替え練習(ブレストーン)
- 「う〜」で裏声→中音→地声へと滑らかにつなげる
- できれば録音して、どこで“引っかかっているか”を確認
ここが裏声練習のハイライト。
一日5分でもいいので、継続すると徐々に“つながる感覚”がつかめます。
おすすめ練習スケジュール(週4〜5日×10分)
- 月・木:ステップ0+1+3
- 火・金:ステップ0+2+4
- 土or日:全ステップ通し+録音チェック
この章のまとめ
- 裏声は“力を抜いて出す”もの。感覚のつかみ方が最初のカギ
- ステップ0〜5の順に進めれば、初心者でも習得しやすい
- 週4回、1日10分でも継続すれば声は確実に変わる
次章では、裏声と地声の違いを理解し、混ぜる(ミックスボイス)基礎について解説します。
第3章:裏声と地声の違いとは?初心者向け“ミックス”の入り口
「裏声」と「地声」、実は境界線はあいまい
よく聞く質問のひとつが、「これは裏声?それとも地声?」という疑問。
実はこの二つ、明確にパキッと分かれているわけではありません。
むしろ、裏声と地声はグラデーションのように連続しているものと捉える方が実用的です。
まずは“それぞれの特徴”を押さえよう
地声の特徴(チェストボイス)
- 胸に響くような、力強い声
- 日常会話・大声・叫びなどが地声の範囲
- 声帯がしっかり閉じ、厚く振動している
裏声の特徴(ファルセット)
- 軽く柔らかい、高く空気を多く含んだ声
- 声帯は薄く閉じ、隙間から空気が漏れながら鳴る
- 響きは鼻腔や頭部の方向へ抜ける
裏声と地声の「中間」をつなぐのがミックスボイス
ミックスボイスとは、地声の力強さ+裏声の柔らかさを“つなぐように混ぜた声”のこと。
この声が出せるようになると、高音域でも喉を痛めず、自然な音色で滑らかに歌えるようになります。
ミックスボイス=“声帯のコントロール技術”
「特別な声」ではなく、裏声・地声のバランスを意図的に調整する技術こそがミックス。
初心者はまず、裏声を自在にコントロールできることが土台になります。
初心者が最初に試すべき練習:裏声⇄地声の滑らかスイッチ
- 「う〜」で裏声 → 少しずつ息を強めて地声に変化
- 逆に「え〜」と地声 → 音を細くしながら裏声へ
- 録音して、「ひっくり返る」ポイントをチェック
この“ブレイクポイント”を見つけ、音がつながるように調整していくのが第一ステップです。
裏声が整えば、ミックスへの道は近い
ミックスを極めるには時間がかかりますが、裏声の安定性=ミックスの土台となります。
裏声を強く・しっかり出せるようになると、ミックスも自然と見えてきます。
この章のまとめ
- 裏声と地声ははっきり区切れるものではなく、つながっている
- ミックスボイスは“地声と裏声のコントロール技術”
- まずは「裏声⇄地声」がスムーズにつながる状態を目指そう
次章では、裏声の弱さ・不安定さ・かすれを克服するためのトレーニングを紹介します。
第4章:裏声が弱い・かすれる・不安定なときの改善トレーニング集
「出るけど弱い」「かすれて続かない」——原因は“声帯の筋力不足”
裏声を出せるようになったのに、「音が薄い」「すぐ裏返る」「息が漏れて安定しない」…
これは声帯の閉鎖が甘い、または呼気のコントロールが不安定であることが多いです。
改善には「筋トレ的アプローチ」が必要になります。
改善ポイント1:声帯を“しっかり閉じる”裏声トレーニング
① ハミング強化
- 「ん〜〜〜」をできるだけ細く、長く、小さな音で出す
- 振動が鼻先・口の中にあるか確認する
息漏れの少ない裏声をつくるための、最も安全で効果的な練習です。
② ウィスパーボイス→クリーントーン化
- 「はぁ〜〜」とため息のような声から始める
- だんだん息を減らし、声を明瞭にしていく
“かすれる裏声”を“芯のある裏声”に変える手順です。
改善ポイント2:共鳴を意識して「響く裏声」を育てる
③ 鼻腔共鳴の意識化
- 「ん〜〜」「い〜〜」の発声で、鼻の奥が振動するか確認
- 響きが口先に偏らないよう、目の下あたりを意識する
④ “指1本ハミング”トレーニング
- 鼻の下に指を当てて、共鳴の強さを指で感じる
- 指がよく振動すれば、響きが強く出ている証拠
共鳴は裏声のボリュームを補う役割も果たすので、響かせ方の習得は非常に重要です。
改善ポイント3:音程のブレをなくすピッチ強化
⑤ 1音スケールアップダウン練習
- 「う〜」「い〜」で3音上→3音下を繰り返す(例:ドレミ→ミレド)
- 録音して、音程の“揺れ”をチェックする
⑥ ピアノorアプリとの同時発声
- ピアノアプリで1音鳴らし、同じ高さで裏声を出す
- チューナーアプリでピッチのズレを可視化
初心者が苦手な「音が上がると裏返る」を防ぐには、狙った音に“ピタッ”と当てる感覚の育成が必要です。
練習スケジュール例(改善型:週4日×15分)
- 月・木:①②③(出しやすさと芯をつくる)
- 火・金:④⑤⑥(響きとピッチの安定化)
この章のまとめ
- 裏声が弱い・かすれる原因は「閉鎖力不足」と「息の調整ミス」
- ハミング・共鳴・ピッチトレーニングで安定感をつける
- 裏声は“鍛えれば強くなる声”。筋トレ的な積み重ねが鍵
次章では、裏声が歌にどう活きるのか?実践への活用と選曲のポイントを紹介します。
第5章:裏声を“歌”で活かす方法|初心者におすすめの使い方と曲選び
裏声は“武器”になる。だから使いどころが大事
裏声は、ただ出せるだけでは意味がありません。
「どう活かすか」=表現の引き出しとして使えることが本当の意味での“裏声マスター”です。
裏声の使い方にはパターンがある
- ① 高音を乗り越えるための切り替え
地声の限界を超えるための“逃げ”ではなく、“技術”として使う - ② 曲中の雰囲気チェンジ
サビ前・落ちサビなど、空気感を変えるための裏声 - ③ 感情表現のツール
優しさ・儚さ・緊張感など“地声では出せない”情緒を加える
初心者でも挑戦しやすい裏声の使い方
- 語尾だけ裏声にする(例:「愛してる〜〜↑」)
- 1行の最後だけ裏声に切り替える(余韻や儚さを演出)
- サビ直前で“ふっ”と抜くように裏声を使う
このように、一部分だけ裏声を入れる“アクセント技術”は、初心者でも取り入れやすく、効果も大きい方法です。
裏声が映えるジャンル・シチュエーション
- バラード・ミドルテンポ(感情重視・抜けの良い裏声が映える)
- 女性ボーカル曲のキーをそのまま歌う男性(裏声の使いどころが豊富)
- アカペラや弾き語り(声そのものの表現力が求められる)
初心者におすすめの“裏声活用”練習曲
- 米津玄師「Lemon」:サビの裏声切り替えが明確
- あいみょん「マリーゴールド」:優しく響かせる裏声が効果的
- Official髭男dism「Pretender」:語尾裏声が多く、練習にぴったり
“裏声が映える”歌い方のコツ
- 裏声に入る前は“脱力と深呼吸”
- 裏声の後に一拍置いて、次の声を安定させる
- 録音→再生→修正のループで練習
裏声は意外と“ちょっとした出し方の変化”が印象を大きく変える要素です。
そのため、録音によるセルフチェックは引き続き重要です。
この章のまとめ
- 裏声は“使いどころ”と“切り替え方”がポイント
- 語尾・サビ前など、少しずつ使うことで自然な歌声に
- 裏声の“表現力”を活かせる選曲と録音練習が鍵
声の幅が広がると、歌の楽しさも倍増します。
裏声を“苦手”から“得意”へ。あなたの歌に、もう一段深い魅力を加えてみませんか?
Voishはどんな方にオススメできる?


・高音が出ない
・音痴をどう治したら良いか分からない
・Youtubeや本でボイトレやってみるが、正解の声を出せているか分からない