ボイトレの仕方が間違っている?喉が痛くなる原因と正しい練習法

なぜボイトレで喉が痛くなる?初心者が陥りやすい5つの原因

1. 発声前のウォームアップ不足が招く「筋緊張」

ボイトレ初心者が最も見落としやすいのが「発声前の準備不足」です。特に半閉鎖声道エクササイズ(SOVTE)などのウォームアップを省いた状態で歌い始めると、喉の外側の筋肉に過度な力が入り、発声筋群が過緊張を起こしてしまいます。

Savarehら(2023年)の研究によると、リップトリルやストロー発声などのSOVTEを20分行うことで、喉の外側の筋肉の活動量が有意に減少することが確認されました。つまり、ウォームアップをしない状態で発声を始めると、喉に無駄な力が入り、痛みを感じやすくなるのです。

発声前の3分〜5分間だけでも、軽いハミングやリップロールを行うだけで、喉の筋緊張を減らすことができます。喉の痛みを感じる前に、しっかりと準備運動を行うことが重要です。

2. 長時間の無休憩練習がもたらす「声帯疲労」

「たくさん練習すればするほど上達する」と考えるのは危険です。特に初心者のうちは、長時間の連続歌唱によって喉に大きな負担をかけてしまうケースが目立ちます。

Yiu & Chan(2003年)の研究では、アマチュア歌手に連続歌唱をさせたところ、休憩を取らなかったグループでは声質の劣化や音域の低下、ジッターの増加といった疲労症状が顕著に現れた一方、こまめな水分補給と休憩を取り入れたグループでは、声の状態が安定したままであったことが示されています。

特に30分以上の連続歌唱をした場合、声帯粘膜が乾燥しやすくなり、摩擦が増えて傷つきやすくなるため、15分に1度は水を飲む、1時間に1度は数分休憩する習慣を持ちましょう。

3. 喉への過度な力みが生む「フォノトラウマ」のリスク

初心者にありがちな問題のひとつが、「喉に力を入れて声を出す」こと。これはいわゆる「押し声」や「力み声」と呼ばれ、短期間でも喉の疲労や損傷に直結するリスクがあります。

Van Lierdeら(2007年)の研究では、過剰な筋緊張によって声帯の粘膜が硬化・厚化する「フォノトラウマ(声帯損傷)」が起きやすいことが確認されました。これは声帯の柔軟性が失われ、発声時にさらに力が必要になるという悪循環を引き起こします。

「力まないと声が出ない」と感じる場合は、喉そのものではなく、呼吸や姿勢、口の開きなどに原因があることが多いです。無理な発声は避け、喉に違和感を覚えたらすぐに練習を中止し、回復を優先させましょう。

4. 呼吸筋が未発達で喉に負担が集中

喉が痛くなるもうひとつの要因は「呼吸の浅さ」にあります。胸式呼吸や浅い吸気のまま歌うと、息の支えが足りず、声を出すために喉や首の筋肉に過剰な負荷がかかってしまいます。

Yılmazら(2025年)の研究では、歌唱前に呼吸筋のウォームアップ(インスピレーショントレーニング)を行うことで、発声持続時間や声域が改善され、喉にかかる負担が軽減されたと報告されています。

初心者は特に、深い腹式呼吸ができていない場合が多いため、練習前に腹式呼吸や深呼吸を取り入れるだけでも、喉の痛み予防につながります。

5. クールダウンの欠如が喉の炎症を助長

運動と同じく、発声にも「クールダウン」が必要です。ボイトレ後すぐに練習を終えてしまうと、喉頭の緊張が残ったままとなり、翌日以降に違和感や痛みが出やすくなります。

Ragan(2018年)の研究では、歌唱後にクールダウンを行ったグループは、発声時の基本周波数が安定し、声のリラックス状態への回復が早まったとされています。逆にクールダウンを省いた場合は、緊張が残り、疲労感が長引くことが明らかになっています。

簡単なハミングや中低音でのスケールダウンなどを行い、喉の状態をリセットする時間を設けることで、慢性的な痛みのリスクを減らせます。

まとめ:喉が痛いと感じたら見直すべき練習習慣

  • ウォームアップを怠らない
  • 練習中はこまめに休憩と水分補給を入れる
  • 喉に力を入れて出す声はNG。無理な発声は控える
  • 呼吸筋を鍛えるウォームアップを習慣に
  • クールダウンで喉の緊張を和らげる

次章では、これらの知識を踏まえ、「喉を守りながら上達するボイトレの仕方」について、具体的なトレーニングメニューと実践方法をご紹介します。

喉を痛めないボイトレの仕方とは?初心者でもできる安全な練習メニュー

1. 喉に負担をかけない「姿勢と呼吸」の基本を整える

喉の痛みを予防するボイトレの第一歩は、正しい姿勢と呼吸です。姿勢が崩れていると、声帯に無駄な負荷がかかり、長時間の練習に耐えられなくなります。背筋が丸まっていたり、顎が上がっていると、喉が詰まりやすくなり、呼吸も浅くなるため、喉を痛める原因になります。

正しい姿勢のポイントは以下の3つです。

  • 両足を肩幅に開き、重心を左右均等に
  • 首をまっすぐに保ち、顎を軽く引く
  • 胸を張らず、背中と首を自然なラインに沿わせる

加えて、腹式呼吸を意識した呼吸練習を取り入れることで、喉に頼らずに声を支えることができます。初心者でもすぐにできる呼吸練習としては、「息を4秒吸って、8秒で細く吐く」を繰り返すだけでも、横隔膜と呼吸筋が活性化され、発声時の安定感が増します。

2. 喉をリラックスさせる「発声前ウォームアップ」

ボイトレを始める前には、喉と声帯を「発声しやすい状態」に整える準備が必要です。特に初心者に有効なのが、リップロールやストロートレーニングなど、声帯への負荷が少ない半閉鎖声道発声(SOVTE)です。

研究によると、SOVTEを実施することで喉頭周辺の筋活動量が減少し、発声がより効率的になることが確認されています。以下のようなウォームアップメニューを3〜5分程度取り入れると、喉への負担が軽減されます。

  • リップロール(唇を振動させながら「ブー」と発声)
  • ストロー発声(細いストローをくわえて息を吐きながら音階を出す)
  • ハミング(軽い鼻歌のように鼻腔に響かせて発声)

これらの発声は、声帯を無理に閉じず、適切な空気圧で振動させるため、喉の違和感や痛みの発生を防ぐのに最適です。

3. 喉に優しい発声練習のステップ

発声練習では「声を前に出す感覚」を重視し、無理に喉で支えないことが重要です。以下のステップで段階的に進めると、喉の負担を抑えつつ安全にトレーニングできます。

ステップ1:母音のロングトーン

「あ・い・う・え・お」などの母音を使い、それぞれ5秒〜10秒かけて一定の音量で出します。ポイントは「息を止めずに流し続ける」「喉ではなくお腹で支える」ことです。

ステップ2:音階練習(ドレミファソファミレド)

ピアノアプリやチューナーを使って、ゆっくりと階段を登るように音を当てていきます。無理に高音を出そうとせず、自分が快適に出せる範囲に留めることが大切です。

ステップ3:単語を使った発声

「パパパ」「タタタ」「ラララ」など、子音+母音の組み合わせでリズミカルに発声することで、喉ではなく口元や呼気のコントロールで音を出す感覚が養われます。

4. 喉の緊張をほぐす「ストレッチ&マッサージ」

練習前後に喉の周辺筋肉をストレッチすることで、筋緊張による痛みや不快感を予防できます。Zieglerら(2024年)のメタ分析によれば、喉頭周囲のマッサージ(MCT)は声の揺れや雑音を有意に軽減し、より澄んだ安定した声を生む効果があると報告されています。

以下のようなストレッチは、自宅でも簡単に実施できます。

  • 首を左右にゆっくり回す(1回10秒×2セット)
  • 鎖骨の下を軽く押さえながら首を斜め後ろに伸ばす
  • 喉仏の両側を人差し指と中指で優しく上下にさする

マッサージやストレッチを加えることで、練習後の「喉の詰まり感」や「引っかかる感じ」を和らげ、疲労回復を早めることができます。

5. 喉のサインを見逃さない!無理せず調整する意識

喉が痛くなる一番の原因は「無理をしてしまうこと」にあります。「少し疲れたけどまだ大丈夫」と思って続けてしまうことで、声帯や筋肉に取り返しのつかないダメージが蓄積していきます。

痛みや違和感が出たときは、「悪くなる前に止める」勇気を持つことが、結果的に上達への近道です。以下のような症状が出た場合は、即時練習を中断し、休養を優先してください。

  • 喉がヒリヒリする
  • 声がかすれる
  • 高音が出にくい
  • 話すだけで喉に違和感がある

初心者は特に、「喉を守りながら上達する」意識を常に持つことが重要です。

まとめ:喉を守る正しいボイトレの習慣化

  • 姿勢と呼吸を整えたうえでボイトレに取り組む
  • 発声前のウォームアップを習慣化する
  • 喉に優しい発声法と段階的練習で負担を減らす
  • ストレッチやマッサージで練習後のケアを行う
  • 喉の違和感を見逃さず、適度に休む

次章では、こうした練習を毎日の生活に取り入れていくための「継続できる練習スケジュールとセルフチェック方法」についてご紹介します。

喉を守るためのボイトレ継続スケジュールとセルフチェック法

1. 喉を傷めない1週間の練習スケジュールの立て方

喉に無理をさせず、着実に歌の技術を高めるには「計画的な練習」が重要です。闇雲に毎日長時間練習してしまうと、声帯に負荷が蓄積し、喉の炎症や損傷のリスクが高まります。Yoneyama & Sawaki(1959年)の研究では、1日3時間以上の連続練習を行った学生は、声帯の充血や声枯れなどの不調が現れる割合が高かったことが報告されています。

初心者の場合、以下のような1週間の練習スケジュールが喉に優しく、継続もしやすいとされています。

■ 初心者向け1週間ボイトレスケジュール例

曜日練習内容練習時間
発声ウォームアップ+母音ロングトーン20分
お休み or 軽いストレッチのみ10分以内
音階練習+リズム発声トレーニング25分
録音+フィードバックチェック15分
短い曲の歌唱(1曲のみ)+クールダウン20分
姿勢と呼吸の再確認+腹式呼吸トレ20分
完全休養 or ストレッチ&マッサージ自由

このように「声を出す日」と「休む日」を明確に分けることで、喉を酷使せず、回復と成長のバランスが取れた練習が可能になります。

2. 喉を労るための「セルフチェック5項目」

喉のコンディションは目で見えません。だからこそ、日々の練習前後に簡単なセルフチェックを取り入れることが、喉の健康維持に役立ちます。

■ 練習前チェックリスト

  • 昨日より声が出しづらいと感じる
  • 喉に軽いヒリヒリ感がある
  • 深呼吸したときに喉周辺がつまる感じがある

■ 練習後チェックリスト

  • 声がかすれてきた
  • 話すときに痛みや違和感がある
  • 水を飲んでも喉の乾きが続く

これらの項目に1つでも当てはまった場合は、翌日の練習を軽めにしたり、完全に休むなどの対応が必要です。自分の喉の声帯状態を把握し、無理せず調整することが、長期的な上達の鍵になります。

3. 成果を可視化する「ボイトレ記録ノート」のすすめ

トレーニングの効果を感じられないと、人はモチベーションを失いやすくなります。そこでおすすめしたいのが、「ボイトレ記録ノート」の活用です。

以下のような内容を毎回記録するだけでも、喉の状態と練習の成果を把握しやすくなります。

  • その日の練習内容と時間
  • 練習前後の喉の状態(痛み・かすれなど)
  • できるようになったこと/できなかったこと
  • 次回やるべきこと、気をつけたい点

さらに、週に1度の「録音レビュー」を加えると、客観的に自分の変化がわかりやすくなります。「この曲の高音が出しやすくなった」「抑揚がつけやすくなった」など、小さな成長を自分で確認することが、継続のモチベーションにもつながります。

4. 喉を守る意識を育てる「セルフケア習慣」

喉を痛めないための練習だけでなく、日常生活での「喉のケア」もとても大切です。特に乾燥する季節やエアコンの効いた部屋に長時間いる場合は、喉の粘膜が乾きやすく、声帯に負担がかかります。

■ 喉を守る生活習慣の例

  • こまめに水分補給をする(コップ1杯を1時間ごと)
  • 湿度50~60%を保つよう加湿器を使う
  • 寝る前や起床後に軽くうがいをする
  • 寝起き直後の発声は避ける(30分は喉を温めてから)

喉の環境づくりと回復を意識した習慣を持つことで、ボイトレによる喉の負担を最小限に抑えることができます。

まとめ:喉を痛めず続けるための「仕組み」と「意識」

  • 練習スケジュールは「無理なく継続」を最優先に
  • 日々のセルフチェックで喉の不調を早期発見
  • ボイトレノートで成長を見える化し、やる気を維持
  • 日常生活の喉ケアも練習と同じくらい重要

喉の痛みは「練習のしすぎ」ではなく「練習の仕方」が原因です。しっかりと自分の声と喉に向き合いながら、無理のないペースでトレーニングを重ねていけば、喉を痛めることなく着実にレベルアップしていけます。

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