音痴がボイトレで治らないのはなぜ?治りづらい原因と効果を引き出す練習法を解説

音痴が“ボイトレで治らない”のはなぜ?3つの主要原因を科学的に解説

「ボイトレを続けているのに、音痴が治らない」
「高いレッスン代を払っても、上達している気がしない」

そんな声をよく聞きます。

でもそれ、あなたが悪いわけではありません。
実は、ボイストレーニング(以下ボイトレ)で効果が出にくい“音痴のパターン”があることが、近年の研究で明らかになってきました。

原因①:先天的な音高認知障害(コンジェニタル・アムージア)

この障害は、音の高さ(ピッチ)を正しく認識できない脳の特性によるもので、従来「生まれつきの音痴」と呼ばれてきました。

脳画像研究(Louiら, 2009)によると、音痴の人は健常者に比べて音高処理に関与する神経回路の白質量が少ないことがわかっています:contentReference[oaicite:0]{index=0}。

このタイプの特徴:

  • ✔ 音の上がり下がりが聞き分けられない
  • ✔ メロディを覚えにくい
  • ✔ 録音を聞いても自分のズレに気づかない

従来のボイトレでは、“どこが外れているか”がそもそも分からないため、いくら練習しても改善が難しい傾向があります。

原因②:聴覚と発声の“変換ループ”にズレがある

音感はあるのに、正しい音が声で再現できない——これもよくある“ボイトレが効きづらい音痴”です。

Hutchins & Peretz(2012)の研究では、声ではなくスライダーで音を合わせた場合、音痴者の正解率が高かったという結果が出ています。

つまり、耳は問題ないが、喉がうまく動かせない=センサリモーター制御の未熟さが原因なのです。

このタイプの特徴:

  • ✔ 正しい音は頭で分かっているのに、出した声がズレる
  • ✔ 声が毎回違う高さで出てしまう
  • ✔ ロングトーンで声が揺れる、安定しない

この場合、ただ“真似て歌う”だけのボイトレでは修正が難しいことが多いです。

原因③:心理的ブロックによる“音痴意識”

「自分は音痴だから」と思い込んでしまう心理的な要因が、上達の妨げになっているケースもあります。

Wise & Sloboda(2008)は、自称音痴の人の多くが実際には音感的な問題ではなく、自信や不安が原因だと報告しています。

このタイプの特徴:

  • ✔ カラオケや人前だと声が出なくなる
  • ✔ 「どうせ自分は下手だから」と思ってしまう
  • ✔ 成功体験が少なく、練習が怖くなってしまう

このタイプには、技術的な指導だけでなく“安心できる練習環境”と“肯定的なフィードバック”が不可欠です。

まとめ:ボイトレで治らない音痴には、“根本原因”がある

ボイトレで音痴が改善しない原因は、

  • ・脳の音高認知力に問題がある(先天性失音症)
  • ・聴覚と発声の神経的連携が弱い(センサリモーター障害)
  • ・心理的なブロックで声が出ない(自信の欠如)

次章では、それぞれのタイプに合った「改善の方向性」や「ボイトレの工夫」について詳しく解説していきます。

ボイトレで音痴が治らない人に共通する3つの特徴と改善の方向性

「ボイトレは続けてるのに、音痴が治らない」
そんな人には、実はある“共通点”があります。

この章では、最新の研究やボイストレーニング指導の現場から見えてきた、ボイトレが効きづらい人の特徴と、そこから導き出される改善の方向性を紹介します。

特徴①:ズレに気づいていない(自己フィードバックの欠如)

音痴の中には、「自分では合っているつもり」なのにズレているタイプが存在します。

これは“音痴無自覚型”と呼ばれ、音を聴いて再現する感覚が弱く、声がズレていても気づかないのが特徴です。

なぜボイトレが効かないのか?

  • ・正しい音を出すように指導されても、自分がズレていると認識できない
  • ・録音を聴いても、自分のズレをうまく分析できない

改善の方向性:

  • ✔ ピッチ可視化アプリでズレを“目で見る”
  • ✔ 「できた音」だけを繰り返し再現し、“体に覚えさせる”
  • ✔ 自分の発声と正解音を重ねて聴く練習(オーバーラップ法)

目で見る/耳で聴く/体で再現する——この3つを一体化させることが鍵になります。

特徴②:毎回音が違う(不安定型・運動再現性の欠如)

音は分かっていても、「いつも違う声が出てしまう」という人は、声を安定して出す身体の習慣ができていない可能性が高いです。

これは「再現性の欠如型音痴」と呼ばれ、不安定な喉・息・姿勢などが原因になります。

なぜボイトレが効かないのか?

  • ・「真似して出す」練習だけでは、“安定する感覚”が育たない
  • ・練習内容が日によって違い、“身体が覚える機会”が少ない

改善の方向性:

  • ✔ ロングトーンで“音を保つ”トレーニングを習慣化
  • ✔ 1日1音でも“同じ音を再現できた回数”を記録
  • ✔ 同じフレーズを“5回連続で再現”して安定性を高める

「当てる力」ではなく「安定させる力」を鍛えるボイトレが必要です。

特徴③:「できるわけがない」と思っている(心理的ブロック)

「音痴だと笑われた」「カラオケで恥をかいた」
そんな経験が、“自分は音痴”という強い思い込みをつくってしまうことがあります。

このタイプは、本当は能力があるのに、恐怖や自己否定が先に立ち、練習がうまく機能しません

なぜボイトレが効かないのか?

  • ・正解を出そうとするほど緊張してしまう
  • ・指導を“ダメ出し”と感じてしまい、自信を失う

改善の方向性:

  • ✔ 練習に「評価されない時間」を設ける
  • ✔ 録音した声の“いい部分”だけを言語化する
  • ✔ 「できた音」を褒められる環境をつくる

スロボダ(2005)は、「“音痴と思い込んでいるだけ”の人は、自己肯定と安心が改善の第一歩になる」と述べています。

共通点:どのタイプにも“気づき”が鍵になっていた

治らないと感じる人の多くは、

  • ・自分のズレを“知らない”
  • ・“同じように出す感覚”を持っていない
  • ・「自分は無理」と決めつけてしまっている

この3つを乗り越えるために必要なのは、音を“出す”よりも“整える”練習です。

まとめ:ボイトレで治らない人には、ボイトレの“設計変更”が必要

どんなに練習しても効果が出ないときは、その練習があなたの音痴タイプに合っていない可能性があります。

合っていない練習は、頑張るほど自信を失ってしまうこともあります。

だからこそ必要なのは、

  • ✔ “どこでズレるのか”を明確にすること
  • ✔ “当たった音”をベースに組み直すこと
  • ✔ “自分を否定しない”ボイトレに切り替えること

次章では、これらの改善の鍵を実践に落とし込むための、効果が実証されているトレーニング方法を紹介します。

音痴がボイトレで改善した研究事例と、効果が出たトレーニング方法

「ボイトレじゃ治らない音痴も、実際に改善したケースってあるの?」

答えは、YESです。

この章では、実際に音痴が改善した研究や教育現場の事例をもとに、どんな練習が効果を発揮したのかを、トレーニング内容とともに紹介します。

事例①:ピッチ可視化で自覚が生まれ、音程一致率が上昇(Hutchins et al., 2010)

対象:音程認知は正常/再現に難ありの大学生10名

実践内容:

  • ・音を出した瞬間のピッチをアプリで視覚化
  • ・“当たった音”をメモ→再現を繰り返す

結果:

  • ・4週間でピッチ一致率が平均23%改善
  • ・「どこがズレていたか」に気づけるようになった

“見える化”によって、自分の声を自分で理解できるようになったことがポイントでした。

事例②:再現練習で「できた音」を体で覚える(Dalla Bella et al., 2013)

対象:音程の再現が毎回バラつく“不安定型”の被験者群

実践内容:

  • ・「ド→レ→ミ」の3音フレーズを1日10回模唱
  • ・録音を再生し、“同じように歌えた回数”を記録

結果:

  • ・再現率が2週間で30%から65%に向上
  • ・「安定してきた感覚がある」と本人も発言

“成功した感覚”を再現する練習が、ボイトレの効果を引き出した好例です。

事例③:「評価されない練習環境」で声が出るようになった(小畑, 2005)

対象:女子中学生/カラオケでの失敗体験から声が出なくなった

実践内容:

  • ・点数表示のない練習空間で1音発声
  • ・録音した音の“良いところだけ”を言葉にする

結果:

  • ・3ヶ月で歌詞の発声と音程が安定
  • ・カラオケでも自信を持って歌えるように

「声を出してもいい」と思える安心感が、喉の力みを解消し、ボイトレ効果を引き出しました

効果があったトレーニング①:ロングトーン+録音+可視化

対象:ピッチが揺れる/ズレに気づけないタイプ

方法:

  • ・「イー」「アー」など母音で5秒間ロングトーン
  • ・録音して可視化アプリでピッチの揺れを確認
  • ・“揺れが少なかった音”だけを再現練習

目的:

“ズレない感覚”を身体に蓄積させていくこと。

効果があったトレーニング②:「当たった音」を日記に記録

対象:練習の効果を感じづらい人/成功体験が少ない人

方法:

  • ・1日1回、録音した中で「よかった音」を1つ選ぶ
  • ・「今日は“ド”が当たった」と記録
  • ・週に1度、記録を読み返す

目的:

練習の“過程”ではなく“成果”にフォーカスし、自信を積み上げる

効果があったトレーニング③:同じフレーズを5回連続で再現

対象:毎回声が違う/再現力が低いタイプ

方法:

  • ・「ドレミレド」など簡単なフレーズを5回連続で模唱
  • ・録音して、どれだけ“同じように歌えたか”をチェック

目的:

“安定させる力”を習慣として身につけること。

まとめ:ボイトレで治った音痴に共通していたのは“気づき・再現・安心感”

成功事例に共通していたのは、

  • ✔ 自分の声の“ズレ”や“できた瞬間”に気づけたこと
  • ✔ “当たった音”を繰り返して“再現力”を育てたこと
  • ✔ 評価されない空間で“安心して練習”できたこと

次章では、これらの研究結果を踏まえながら、「なぜボイトレで音痴が治る人と治らない人がいるのか?」について、心理・脳科学・指導法の視点から総まとめしていきます。

まとめ:なぜボイトレで音痴が治る人と治らない人がいるのか?

ボイトレに通って改善する人もいれば、
「何年やっても変わらなかった」と感じる人もいます。

同じように努力しているのに、なぜこんなに結果が違うのでしょうか?
その答えは、音痴の“タイプ”と“気づきの設計”にあります

違い①:「ズレていると自覚しているか」

まず大きな違いは、自分の発声がズレていることに気づけているかどうか

気づけている人は、「あ、今外した」と感じながら修正できます。
でも、気づけていない人は、「今ので合っている」と思いながら練習を続けてしまうのです。

その結果、ズレた音を“正解”として体に覚えさせてしまう

対策:

  • ✔ 録音とピッチ可視化で「客観視」する習慣をつける
  • ✔ 練習後の“聞き返し”をルーティンにする

違い②:「できた音をどう扱っているか」

ボイトレで改善する人は、「当たった音」や「安定していた声」に注目して、そこを伸ばしていきます

逆に、改善しない人は、「また外した」「全然うまくいかない」と、“できなかったところ”ばかりに意識を向けがちです。

成長する人は、“小さな成功”を積み重ねて自信をつくることができるのです。

対策:

  • ✔ 「できたことノート」を作る
  • ✔ 練習中の“成功音声”を保存して、後で聴き返す

違い③:「安心して声を出せる環境があるか」

治らない人の中には、「失敗を恐れて声が出せない」という人も少なくありません。

特に過去に「音痴だ」と言われた経験がある人は、自分の声を出すこと自体にブレーキがかかっていることがあります。

この心理的ブロックは、いくら正しい指導を受けても、声を出せない=練習にならないという結果を招いてしまいます。

対策:

  • ✔ 他人の評価が入らない“自習空間”を確保する
  • ✔ 点数や採点結果の表示をオフにする
  • ✔ ボイトレは“安全地帯”であることを意識する

治るかどうかは「才能」ではなく、「構造と設計」の問題

音痴が治るかどうかを決めるのは、声帯や耳の良し悪しではありません

それよりも、

  • ・自分のタイプを知ること
  • ・練習の方向を合わせること
  • ・成功を育てる設計に切り替えること

——これだけで、“ボイトレで変わる人”になる可能性は十分にあります。

おわりに:ボイトレで音痴が治らないなら、「練習の中身」を見直して

あなたが今まで努力してきたこと、それ自体には意味があります。

でも、もしその努力が思うような結果につながっていないなら、“努力の設計”を見直すときなのかもしれません。

ボイトレで変われない人はいない。
ただ、“その人に合った変わり方”をしていないだけ。

次章では、この記事全体を総まとめしながら、「ボイトレで音痴を改善するために、明日から始められること」を整理してご紹介します。

総まとめ:音痴がボイトレで改善するために、明日からできること

「音痴を直したい。でもボイトレをやっても治らなかった」

この記事では、そんな悩みを抱えるあなたに向けて、音痴がボイトレで治りづらい理由や改善に成功した人たちの共通点、実際に効果があったトレーニング方法などを紹介してきました。

そして最後にお伝えしたいのは、「音痴は工夫次第で変えられる」という確かな希望です。

まず確認したい3つの「よくあるつまずき」

  1. ① 自分のズレに気づけていない(音痴無自覚型)
    → 録音・可視化・オーバーラップ練習を使うことで、気づけるようになります。
  2. ② 毎回声が変わる(不安定型・再現性の欠如)
    → 同じ音を何度も再現する練習が必要です。特に「ロングトーン+録音」は効果的。
  3. ③ 自分は無理だと思っている(心理的ブロック型)
    → 評価されない場所で、できたことにだけ目を向ける練習が必要です。

明日からできる“音痴改善ボイトレ習慣”5選

① 録音習慣

スマホでOK。「1日1フレーズだけ録音→聞く」を日課に。

② ピッチ可視化アプリの導入

声の揺れやズレを“目で見る”だけでも気づきが大きく変わります。

③ 成功記録ノート

「今日出せた音」を1日1つだけメモ。増えていく実感が自信になります。

④ “評価ゼロ”空間の確保

誰にも聞かれず、点数もつかない空間で思い切り声を出す。

⑤ 同じ音・同じフレーズの反復

「当たった音」を繰り返すことで、安定感と再現力が育ちます。

“治らなかった音痴”を変えた3つの視点

  • ① 技術ではなく“気づき”を育てる
  • ② 練習ではなく“設計”を変える
  • ③ 自分を否定せず“できたこと”だけを拾う

これらを取り入れることで、「自分でも変われるかもしれない」という感覚が育ち始めます。

最後に:あなたの声には、まだ見ぬ“可能性”がある

音痴であることを「才能がないこと」だと思わなくて大丈夫です。
それはただ、まだ“合った練習”に出会っていないだけ

大事なのは、

  • ・ズレに気づく仕組み
  • ・“できた音”を記録する習慣
  • ・評価されない環境で練習する勇気

その3つを持てれば、ボイトレは“治らない人のための手段”ではなく、“変わりたい人が変わるためのツール”に変わります。

あなたの声は、今日から変われる

今日できなかった音も、
明日“できた”に変わるかもしれません。

だから、焦らず、否定せず、少しずつ。

あなたの声は、変わっていい。
あなたの声は、育っていい。

明日もまた、声を出すところから始めてみましょう。

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