「イケボ」だけじゃない、“通る声”の重要性とは
「イケボ=良い声」だけでは不十分?
「イケボになりたい」という願いは、近年SNSや配信文化の浸透とともに多くの人が抱くようになりました。
しかし、いくら低くて響きのある声(=イケボ)であっても、声が通らなければ意味がないというのが実情です。
特にカラオケ、プレゼン、配信、面接、接客など“相手に届く声”が求められる場面では、声の「通りやすさ」が聞き取りやすさ・印象の良さに直結します。
そもそも「声が通る」とはどういうこと?
「声が通る」とは、単に大きな声を出すという意味ではありません。正確には、以下のような特徴を持つ声を指します。
- 音圧が適切に届く(強く押し出す声ではなく響いて届く)
- 中高域に倍音が乗っている(響きがある)
- 雑音やゆれが少ない(HNRやジッタが低い)
- 空間で反響しやすいフォルマント構造
つまり、「通る声」とは筋肉の緊張バランス・発声の支え・響きの位置が整ってはじめて成立する“精密な音響現象”なのです。
「イケボ」×「通る声」で、印象は劇的に変わる
イケボの定義は多くありますが、共通するのは「響きが良く、落ち着きと安心感のある声」。
そこに「通りの良さ」が加わることで、“聴きたくなる声”から“惹きつけられる声”へと昇華します。
配信者、講師、営業職、就活生、ボーカリストなど、あらゆるシーンで求められる「伝わる声」は、まさにこの「イケボ×通る声」の掛け合わせなのです。
「声が通らない…」原因は?
1. 喉・顎・舌の緊張
もっとも多いのが、過緊張による共鳴腔の狭まりです。首や顎、舌の筋肉が硬くなることで声道が歪み、音がこもり響きが飛ばなくなります。
2. 呼気が弱く、支えがない
息の圧力が弱かったり、支えの位置が不安定な場合、声帯がしっかり振動せず、通らない曇った声になります。
3. 声帯閉鎖が不十分
声帯がピタッと閉じずに隙間があると、息漏れの多いかすれ声になり、いくら声を張っても空気ばかり出てしまいます。
4. 共鳴の位置が不適切
声の響きが喉奥や胸にこもってしまっているケースも多く、これは響きの方向が定まっていない状態。上咽頭や鼻腔にうまく響かせる工夫が必要です。
「声が通る」状態をどう作るか?
結論から言えば、「声を通らせる」ために必要なのは次の3つの要素です。
- 体の脱力と支えのある呼吸(腹式+横隔膜)
- 喉・顎・舌・首まわりのストレッチと調整
- 中高音域に通る響きを作る共鳴トレーニング
これらを丁寧に組み合わせることで、通る声×イケボの両方が手に入るのです。
次章では:「通る声を手に入れる3ステップボイトレ」
ここまで「なぜ声が通らないのか」「通る声の特徴は何か」を科学的・身体的に整理してきました。
次章では、今日から始められる3つのステップボイトレを紹介します。これを実践すれば、確実に“声の抜け”が変わってくるはずです。
イケボ×通る声をキープする生活習慣とケア
声の印象は“体の状態”で決まる
イケボであっても、通る声であっても、それを“1日だけ”で終わらせてしまってはもったいない。
本当に大切なのは、「良い声を日常にキープできる体の整え方」と「コンディションを保つ生活習慣」です。
この章では、通るイケボをキープするために押さえておきたい5つの習慣を紹介します。
習慣1:起床後すぐの喉ケアで1日の声が変わる
● NGな朝の過ごし方:
- 水分を摂らずにいきなり発声する
- 冷たい飲み物を一気飲みする
- 無言のまま数時間過ごす
これらはすべて、喉の粘膜や声帯にとって負担になります。起床直後は声帯がむくみやすく、声が通りにくい状態。
まずは、ぬるま湯で喉を潤し、深呼吸+軽いハミングからスタートするのが理想です。
習慣2:水分補給は“声帯の保湿”と心得る
「水は飲んでいるつもり」でも、実際には量もタイミングも不十分な人が多数です。
声を通したいなら、喉の潤いを保つこと=声帯の滑らかな振動に直結します。
● コツ:
- 常温〜ぬるめの水をこまめに(1回100〜150ml、1日6〜8回)
- カフェイン飲料は水とセットで摂取
- 喉が乾く前に水を摂る=予防ケア
これはボイストレーナーや声優も実践する、“声を磨く人の常識”です。
習慣3:姿勢と呼吸を整えるストレッチを毎日5分
声の土台は「姿勢と呼吸」。この2つが崩れていると、支えが失われ、通る声が維持できなくなります。
● おすすめストレッチ:
- 背中を反らす+肩甲骨を寄せる運動(胸を開く)
- 脇腹を伸ばす側屈運動(呼吸の通り道を広げる)
- 首・肩の回旋と脱力(喉周りの力みを取る)
1回5分でOK。毎朝または夜寝る前に行うことで、「声の通りが悪い状態」を予防できます。
習慣4:声を酷使した日は「クールダウン」で回復を
カラオケやプレゼン、配信などでたくさん声を出した日。
そのまま寝てしまうのではなく、声帯と共鳴筋の疲労をほぐす時間を設けましょう。
● クールダウン法:
- 鼻歌ハミング(軽い振動で声帯を整える)
- ぬるめのお風呂に入りながら深呼吸
- ストロー発声(負荷をかけずに息と声のバランスを整える)
特にストロー発声は、疲労時でもできる“声の回復ルーティン”として非常に有効です。
習慣5:メンタルと声はつながっている
最後に見落としがちなのが、心理状態と声の響きの関係です。
不安や緊張、焦りは喉を締め、共鳴腔を狭め、声が通らなくなる原因になります。
● メンタルと声を整えるために:
- 話す前・歌う前に深呼吸を3回
- 「響く声」をイメージしながらハミング
- “声が出る自分”を前提に準備する
この「出せる声」を信じる前提が、自然と声の響きを引き出します。まさに“声は自信の反映”なのです。
イケボと通る声の両立は「習慣」で叶う
ここまで紹介した5つの習慣は、どれも特別な機材もトレーナーも必要ありません。
大切なのは、「声の質は、使う前の準備と使った後の回復で決まる」という意識です。
1日10分でも、身体を整え、喉をケアし、息を意識することで、声の通りと響きは確実に変化します。
次章では:「声が通る」人の特徴と共通点を科学的に解説
次の章では、声の通りが良い人たちの共通点や、音響学・生理学的に裏付けられた“通る声の構造”を掘り下げていきます。
“なんとなく良い声”の正体を、科学的にひも解いていきましょう。
“通る声”の正体――科学で読み解くイケボの条件
「通る声」は何が違うのか?
「声が通る」とは、聞き手に“自然に、はっきり、心地よく届く声”のこと。
では、科学的に見てその声はどう作られているのでしょうか? 音響学・声帯の構造・共鳴特性――あらゆる角度から通る声の秘密を解き明かします。
通る声の3大構成要素
① 声帯閉鎖の適正さ(音源の質)
声の第一歩は「声帯の振動」。
通る声の多くは、声帯がしっかり閉じ、ブレなく振動していることが共通しています。
適度な閉鎖があることで「ノイズが少なく、密度の高い音」が生成されます。
② 共鳴腔の拡張と配置(音の形)
声は声帯だけでなく、喉・口腔・鼻腔・頭部の空洞で響かせて完成します。
通る声の人は、発声時に共鳴腔が広く、音が前方に抜けやすい形を維持できています。これが「顔の前で響く声=イケボ」としても聞こえるのです。
③ フォルマント(共鳴周波数)の分布
「フォルマント」とは、声の中にある強調された周波数帯。特に第2~第4フォルマントがしっかり出ている声は、声に厚み・明瞭さ・響きを持たせます。
これはまさに「聴き手に刺さる声=通る声」の物理的証明でもあります。
音響分析から見える“通る声”の特徴
● ジッタ・シマーが低い
ジッタ(周波数の揺れ)やシマー(振幅の揺れ)は、声の安定性を示す指標です。
通る声はこれらの数値が低く、声がまっすぐ響いて聞こえる傾向があります。
● CPP(ケプストラムピークプロミネンス)が高い
CPPは声の明瞭さを数値化した指標で、プロのナレーターや声優は平均値で7以上を記録することが多いです。
高CPP=透き通る・滑らかな声ということになります。
● HNR(ハーモニックノイズ比)が高い
これは「声の中のハーモニー成分 vs ノイズ成分」の比率を表します。
HNRが高いほど、濁りやガサつきの少ない“美しい声”になります。
「声が前に飛ぶ」とは何が起きているのか?
よくボイトレで使われる「前に飛ばす」という表現。
これは、声の共鳴が上咽頭~鼻腔~前額部に向かって配置されていることを意味します。
共鳴の飛ばし方の例:
- 「ん〜〜」のハミングで鼻先を共鳴させる
- 「ね・め・ま・も」など鼻音を含む発音で響きを探す
- 実際に壁を背にして声の反響感で確認する
この感覚がつかめてくると、響きの「方向」が前方に整い、声が遠くに届くようになります。まさに“声が通る”状態の完成です。
イケボと通る声の音響的共通点
「イケボ」も「通る声」も、音響的には倍音が豊かで、雑音が少なく、フォルマントが明確という点で共通しています。
さらに、以下の条件が重なると「声の印象」は激変します。
- ピッチが安定している(100〜150Hz程度)
- 話速が一定で滑らか
- 声に芯があり、言葉が抜ける
これらはすべて、「喉を開き」「支えを安定させ」「響きを前に導く」というトレーニングで鍛えることができます。
「いい声」には理由がある
「この人の声、なんかいいよね」――その感覚は、すべて科学的に分解できます。
そして、声質の多くは先天的なものではなく、後天的なトレーニングと習慣で再構成可能です。
次章では、これまでの内容を整理しつつ、通る声×イケボを育てる日々のボイトレメニューをまとめて紹介します。
まとめ:通るイケボを育てるための毎日の声習慣
“いい声”は1日で完成しない。でも毎日で育てられる
ここまで、「通る声」と「イケボ」の関係、そしてその作り方と維持法を見てきました。
結論として言えるのは、通るイケボは日々の積み重ねで誰でも育てられるということです。
毎日の5ステップルーティン(所要10分)
以下は、プロも実践しているシンプルで実用的な声習慣です。
- 首・顎・肩のストレッチ(2分)
→ 喉と共鳴腔の可動域を整える - 腹式呼吸と横隔膜エクササイズ(2分)
→ 支えを作り、安定した発声に - ハミングトレーニング(2分)
→ 鼻腔共鳴を高め、声を前に導く - ストロー発声 or リップロール(2分)
→ 声帯を整え、響きを統一する - 短文発声練習(2分)
→ 実際の会話や歌への応用に繋げる
この「10分習慣」を毎日続けるだけで、声の安定・通り・響きが自然と育ち、聞き手からの印象も変化していきます。
週ごとのメニュー進化(徐々にレベルアップ)
- 1週目:「喉を開く」「支える」基礎を整える
- 2週目:共鳴・音程・息のコントロールに意識
- 3週目:短いセリフや課題曲で発声応用
- 4週目:録音・フィードバックで聞き手視点を養う
毎週、小さな目標を設定して、達成していくことで、習慣がスキルへと変化していきます。
よくある落とし穴とその対策
● 落とし穴1:「大きな声を出せば通る」と誤解している
通る声=“響いて届く声”。無理に張り上げると、逆に喉が締まり通りづらくなります。
→ 解決策:共鳴と支えを意識して、“押し出すのではなく響かせる”を意識。
● 落とし穴2:練習しすぎて喉が枯れる
筋肉も声帯も使いすぎれば疲労します。
→ 解決策:休息・水分・クールダウンを忘れずに。喉のサインを見逃さない。
● 落とし穴3:最初の数日で変化がなく諦める
声の変化は“じわじわ”進みます。
→ 解決策:録音やチェックリストを使い、「変化の見える化」を心がけましょう。
録音チェックポイント(週1で録音しよう)
- 声がかすれていないか
- 語尾までしっかり響いているか
- 鼻に抜けすぎていないか
- 喉を締めていないか
- 表情が乗って聞こえるか
録音→分析→修正というサイクルを持つことで、効率よく通る声・イケボへと近づけます。
最後に:あなたの声は、武器になる
低くて響くイケボ、通る声、聞き取りやすい声、安心感のある声――それらはすべて、意識と習慣で手に入るものです。
天性の声だけがすべてではありません。
今日から声を変える努力をすれば、1週間後には響きが変わり、1ヶ月後には印象が変わる。
そして3ヶ月後には、“聞かれる側”から“聞かせる側”へ、あなたの声は成長しているはずです。
通るイケボは、つくれる。
そして、育てていける――それが「ボイトレの力」です。
Voishはどんな方にオススメできる?


・高音が出ない
・音痴をどう治したら良いか分からない
・Youtubeや本でボイトレやってみるが、正解の声を出せているか分からない