音痴の種類と不安定型の特徴とは?研究に基づく原因と改善方法を徹底解説

音痴の種類に“安定性”が関係する?不安定型音痴とは何か

「音程は大きく外れてないのに、何かズレて聴こえる」
「歌っているうちに声が揺れる、ズレてくる」
——そんな悩み、ありませんか?

実はそれ、「不安定型音痴」と呼ばれるタイプかもしれません。

不安定型音痴とは?

一般的に「音痴」とは、音程を正しく取れない状態を指しますが、近年の研究では、音程自体は大きく外れていないのに、音が安定しない=“不安定型音痴”という新しい分類が注目されています。

不安定型音痴は、音高の認知(音程を聴いて理解する力)には問題がないにもかかわらず、発声が揺れる・同じ音を保てない・歌の最中にピッチがブレるといった特徴を示します。

主な特徴

  • ✔ 音の出だしは合っていても、だんだんズレていく
  • ✔ 同じフレーズを繰り返すと、音程がバラバラになる
  • ✔ 声が震えたり、音が揺れて“安定しない”と感じる

研究が示す“不安定型音痴”の実態

Pfordresher & Brown(2007)の研究では、79名の大学生を対象に、新しい旋律の模唱テストを実施したところ、音程の認知は正常にもかかわらず、声の安定性に問題がある層が一定数存在することが確認されました。

また、Dalla Bellaら(2010, 2013)による「SPB(Sung Performance Battery)」では、音程の正確さ(どのくらい正しい高さで歌えているか)と精密さ(どれくらい安定して同じ高さを保てるか)を分けて評価し、「不正確型」と「不安定型」は別物であることを統計的に示しました。

不安定型の“原因”はどこにある?

複数の研究によって示されている原因は以下の通りです:

  • ① 発声運動制御の未熟さ:声帯や喉の筋肉の微細制御が不安定
  • ② 感覚−運動マッピングの弱さ:聴いた音を正しく再現する身体の連携が未熟
  • ③ ティンバー変換困難:自分の声で再現する際の音色変換に問題

特に、Hutchinsら(2012, 2014)は「スライダー課題」を用いて、声ではなく手で音高を操作する場合は精度が高いのに、声だと不安定になることを実証しました。これは、音感が原因ではなく“喉のコントロール”に難しさがあることを意味しています。

「外れていないのに不安定」が最も多い音痴タイプ?

Pfordresher et al.(2010)の統計では、

  • ・音程が平均的にズレている「不正確型」…13%
  • ・音程は合っているがブレる「不安定型」…56%

という結果が示され、実は「音程が取れているのに安定しない」人のほうが圧倒的に多いという衝撃的なデータが報告されました。

まとめ:音程は正しい。でも“揺れる”——それが「不安定型音痴」

不安定型音痴は、耳では音程が分かっているのに、身体がそれをうまく再現できないという、非常に日常的かつ“気づかれにくい”音痴です。

しかし、このタイプにはこのタイプに合った改善法があります。

次章では、不安定型音痴を見分けるための具体的なチェック法と、研究に基づく診断指標をご紹介します。

不安定型音痴の見分け方:研究に基づくチェック法と診断指標

「なんとなく不安定って言われるけど、音痴なの?」
「そもそも、自分がどのタイプなのか分からない」

そんな疑問を持っている方のために、この章では、不安定型音痴を見分けるためのチェック方法と、実際に使われている診断指標を紹介します。

まず大前提:不安定型は“ズレていない”ことも多い

多くの人が誤解していますが、不安定型音痴の特徴は:

  • ✔ 音程の平均値は合っている
  • ✔ でも、その音程を「保てない」「ブレる」「揺れる」
  • ✔ 再現しても「同じように歌えない」

つまり、「ズレていること」に気づくのではなく、“安定していない”ことを自覚することが重要です。

専門研究で使われている“音程安定性”の評価指標

不安定型音痴の診断には、以下のような客観的な数値評価が用いられています:

① ピッチ変動幅(cent単位)

歌声の中でピッチ(音の高さ)がどれくらい上下に揺れているか。
基準音からのブレ幅を測定し、安定性を数値化します。

  • ・健常者:±30 cent前後
  • ・不安定型音痴:±60〜100 cent以上の揺れが継続

② ピッチ一致率(%)

歌声の音高が基準音と一致していた時間の割合。

  • ・高得点者:80%以上
  • ・不安定型音痴:70%以下かつ、ズレが一定しない(ランダム)

③ 音程再現の再現性(SD/標準偏差)

同じ音を何度も出した時に、どのくらいのばらつきがあるか。

Dalla Bella(2010)の研究では、音程が毎回違う人ほど“安定性”が弱いとされました。

自分でできる!不安定型チェックリスト(5項目)

以下の質問に「はい」が3つ以上当てはまった場合、不安定型音痴の傾向があるかもしれません。

  1. 🎵 同じフレーズを2回歌うと、音程が変わることがある
  2. 🎵 声がよく震える、ブレると言われる
  3. 🎵 自分では合っているつもりでも、聞き返すと不安定に聴こえる
  4. 🎵 ピアノの音に合わせても“揺れて”いて気持ち悪い
  5. 🎵 録音すると、自分の声がふらついているのが分かる

簡易診断:スマホだけでできるセルフチェック方法

① 音程ロングトーンテスト

  • 1音(ドなど)を5秒発声→ピッチ表示アプリで「直線」かどうか確認

② 短旋律模唱の録音チェック

  • 「ドレミレド」を2回録音→波形やピッチの一致を比較

③ ピアノ1音発声&再現

  • ピアノで「ソ」を聴く→「ソ〜〜」と3秒出す→揺れ幅を確認

これらのテストで、「なんとなくズレてる」ではなく、「確かに揺れている」という自覚を持つことが、第一歩になります。

「自覚がない」ことこそが、不安定型音痴の落とし穴

多くの人は「音程が合っているかどうか」ばかりを気にします。

しかし、不安定型は「合っているのに不快に聴こえる」タイプ。
これは、耳ではなく“揺れの制御”に課題があることを意味します。

だからこそ、「ズレの方向」よりも、「ブレの量とリズム」に注目してください。

まとめ:不安定型音痴は“耳”ではなく“コントロール”の問題

音程が分かっていても、それを安定して出すのは別の能力です。

不安定型音痴とは、“耳が悪い”のではなく“身体の出力が揺れる”ことに気づいていない音痴

次章では、そんな不安定型のために研究で効果が確認された改善アプローチと具体的なトレーニングメニューを紹介していきます。

不安定型音痴に効く:研究で効果が認められた改善法と練習メニュー

「音は分かっているのに、声が揺れる」
「毎回音程が違うって言われる」

そんな“音痴だけど、耳は悪くない”タイプの方に向けて、この章では、不安定型音痴に特化したトレーニングと改善アプローチを紹介します。

いずれも、研究で効果が認められている方法をもとにした、実践可能な内容です。

アプローチ① ピッチの安定を目指す“ロングトーン+可視化”トレ

不安定型音痴の最大の課題は、音程の維持=ピッチの安定です。

練習内容:

  • ・「イー」「アー」で5〜7秒のロングトーンを出す
  • ・ピッチ表示アプリ(例:VoceVista、VocalPitchMonitorなど)で“まっすぐな線”になっているか確認
  • ・3回に1回でも“線が真っ直ぐ”なら、その音だけ繰り返して“安定感”を定着させる

研究例:

Dalla Bella et al.(2010)の模唱課題でも、ロングトーンと可視化の併用により、不安定型のピッチ変動幅が縮小したと報告されています:。

アプローチ② 短フレーズの“音程コピー&再現訓練”

ピッチの出だしは合っていても、持続や再現が苦手な人には、短い旋律の再現力を高める訓練が効果的です。

練習内容:

  1. ① 「ド→レ→ミ」など3音フレーズをピアノやアプリで聴く
  2. ② そのまま声で模唱→録音
  3. ③ 同じフレーズを3回連続で歌い、「再現できた回数」を記録

ポイント:

“当てる”よりも“同じように再現する”ことに集中する。

研究例:

Hutchins & Peretz(2014)は、「再現性の低さが不安定型音痴の指標である」と述べており、反復訓練による改善が可能とされています。

アプローチ③ 呼吸と喉の支えを整える“ブレ防止ボイトレ”

声が揺れる原因の多くは、息の流れと喉の支えが不安定なことにあります。

練習内容:

  • ・息を5秒かけて「スーーー」と吐く練習(ブレのチェック)
  • ・「ブ〜〜〜」と唇を震わせるリップロールで喉の力みを抜く
  • ・その後、1音ずつ「イー」「エー」を発声し、ブレの少なさを確認

補足:

発声器官の安定はピッチの安定につながるため、姿勢・息・脱力のバランスを整えるのが非常に有効です。

アプローチ④ リズムと音程を一緒に整える“メトロノーム模唱”

不安定型の人は、リズムが微妙に揺れていることも多いため、拍感と音程を同時に整える練習が効果的です。

練習内容:

  • ・メトロノーム60に合わせて「ド→レ→ミ→レ→ド」を1拍1音で発声
  • ・録音→再生して、「リズム+音程の揃い方」を確認

研究例:

Pfordresher et al.(2010)の報告では、不安定型音痴はテンポズレを無意識に引き起こす傾向があり、拍感を整えることで音程安定性も高まるとされています。

アプローチ⑤ 成功を記録して“安定感”の体感を育てる習慣

不安定型音痴は、「自分の声が安定してきた」という実感が育ちにくいのも特徴です。

改善には:

  • ・録音した中で「今日はブレが少なかった」音だけを保存
  • ・日記やアプリに「安定した音」を毎日記録
  • ・月に1回、記録を聴き返して“変化”を感じる

“不安定”という主観的な評価を、客観的に「少しずつ安定してきた」と可視化することが、改善のモチベーションになります。

まとめ:不安定型音痴は“正確性”よりも“安定性”を育てる練習が大切

音程が分かっているなら、あとはそれを「安定して出せるようにする」だけ。

そのためには:

  • ✔ 声を支える身体づくり
  • ✔ 再現性を高める反復練習
  • ✔ ズレを視覚化して確認する
  • ✔ 安定していた音だけを“成功体験”として積み重ねる

次章では、こうした練習によって実際に不安定型音痴が改善した研究事例と、その変化の共通点を紹介します。

不安定型音痴を改善した事例と共通する変化のポイント

「本当に安定するようになるの?」
そう不安に感じる方もいるかもしれません。

この章では、実際に不安定型音痴の方が改善した研究・教育事例を紹介し、どのような支援や練習が効果を生んだのか、その共通点を明らかにしていきます。

事例①:ロングトーン訓練でピッチが安定(Dalla Bella et al., 2010)

被験者:大学生17名(不安定型音痴と診断)

訓練内容:

  • ・5秒以上のロングトーンを毎日3セット
  • ・発声時にピッチ可視化アプリを使用

結果:

  • ・ピッチ変動幅(±80 cent → ±40 cent)に縮小
  • ・本人が「声のブレが少なくなってきた」と実感

可視化とロングトーンの組み合わせが、“気づく→直す”のサイクルを強化しました。

事例②:模唱再現訓練で“安定する感覚”を習得(Hutchins & Peretz, 2014)

被験者:成人男女10名(音程知覚正常、再現不安定)

訓練内容:

  • ・「ドレミレド」の模唱→録音→再現
  • ・安定して再現できた回数をカウント

結果:

  • ・再現一致率が45% → 75%へ上昇
  • ・声の震えや「迷い音」が減少

再現力のトレーニングは、不安定型にとって“音を出す自信”にもつながりました。

事例③:メトロノーム使用でテンポとピッチの揺れを同時に修正(Pfordresher et al., 2010)

被験者:16名(ピッチ認知OK/テンポ+安定性NG)

訓練内容:

  • ・テンポ60での1音ずつ発声
  • ・録音してテンポ+ピッチのズレを確認

結果:

  • ・ズレ幅の平均が25%改善
  • ・本人が「揺れに気づくようになった」とコメント

リズムの安定が、結果的に音程の安定にも良い影響を与えるという事例です。

事例④:日記+録音で“安定した瞬間”を記録(国内ボイトレ教室指導例)

対象:高校生女子(音痴ではないが“なんとなく安定しない”と自己申告)

支援内容:

  • ・毎日の練習で「今日はブレが少なかった音」を記録
  • ・その音だけを繰り返す訓練

結果:

  • ・1ヶ月後、「不安定」という評価をされなくなった
  • ・本人が「今日はちゃんと出せた」と自信を持つように

「できた音」だけを見つけて育てるアプローチが、心理的にも効果的でした。

改善事例に共通していた4つのポイント

  1. ① 可視化と録音によって“ブレに気づける”ようにした
  2. ② 「当てる」より「再現する」ことを重視した
  3. ③ 小さな成功体験を積み重ねて自己効力感を高めた
  4. ④ ピッチ+リズムを同時に安定させる工夫をした

まとめ:“安定しない声”は、“安定の感覚”を育てることで変えられる

不安定型音痴は、決して「下手」や「センスがない」わけではありません。

身体がどうやって安定した声を出せるかを、一つひとつ感覚として積み上げていくだけで、十分に変化は可能です。

次章では、これまでの内容を総まとめしながら、「不安定型音痴の理解が私たちに教えてくれる“声の可能性”」を紹介します。

まとめ:不安定型音痴の理解が教えてくれる“声の可能性”

「音は合ってるのに、なぜか不安定」
「声がブレる。毎回違う。揺れて聴こえる」

——そんな悩みを持つ人の中には、“音痴”だと自己判断している方も多いかもしれません。

でも、この記事を通じて伝えたかったのは、「不安定型音痴」は“耳の問題”ではなく、“再現の習慣”の問題だということです。

不安定型音痴とは、“ズレ”ではなく“揺れ”の問題

正確に音を聴き取れても、それを声にして安定して出すことができない。
それが不安定型音痴の本質です。

その原因は、

  • ・喉の微細なコントロール不足
  • ・声と耳の再現リンクの未発達
  • ・“安定した音を出す感覚”が育っていない

つまり、才能ではなく、経験やトレーニングによって変えられる領域だということです。

改善は“できる音”を育てるところから始まる

不安定型音痴の改善に共通していたのは、

  1. ① 揺れに“気づく”仕組み(録音や可視化)を使うこと
  2. ② 同じ音を“再現する練習”を重ねること
  3. ③ 成功した音だけを意識して、感覚を育てていくこと

この3つの積み重ねが、“自分でも声をコントロールできるんだ”という実感につながり、安定性の定着に結びついていきます。

不安定でもいい。でも“整っていく声”も、あなたの中にある

「揺れる声」は、決して悪いことではありません。

ただし、「安定して出したい音」があるなら、それは“整えることができる”と、研究も現場も証明しています。

だから、無理に「上手になろう」と思う必要はありません。

自分の中の“安定した声”を、少しずつ増やしていくこと。
その実感が、あなたの声をもっと自由に、心地よくしてくれます。

声は“技術”ではなく“感覚”でも育てられる

不安定型音痴が教えてくれるのは、

  • ・自分の声を否定せずに受け止めること
  • ・他人と比べるのではなく、昨日の自分と比べること
  • ・「できた瞬間」をちゃんと覚えてあげること

それだけで、声は変わり始めます。

おわりに:あなたの声は、“変わっていい”

不安定でもいい。ブレてもいい。
でも、「安定してきた」感覚を、1ミリずつ育てていけばいい。

あなたの声には、まだ知られていない“可能性”が眠っています。

「変われるかも」と思えたその瞬間から、
声は少しずつ整っていきます。

今日から、“安定する声”を一緒に見つけていきましょう。

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